為替の構造①:M&Aによる影響

どんなに優秀なエコノミストが予測しても外れるのが為替です。
為替変動の要因を分析するのは、非常に難しいと思います。
そこで、このシリーズでは、為替変動の理論を紹介するとともに、現実に起きている為替変動の要因を筆者なりの見解で書いてみようと思います。

■M&Aが為替に及ぼす影響

100円まで下落するのも近いと言われていた3月中旬までとは、打って変るように、急上昇しているドル・円の動向には驚かされます。

しかし、今回の米ドル/円の上昇には、日本企業による巨額買収に関するマーケットの思惑が影響しているとの見方もあります。

それは、武田薬品のアイルランド製薬大手企業の大型買収案件です

最近の報道では以下の内容が明らかになっています。

○武田は3月末以降、シャイアーに対して全株式を買い取る提案を重ねてきた。
武田は4月24日、シャイアーに対する5度目の買収提案で、提示額を460億ポンド(640億ドル)に引き上げていた。
○武田は約460億ポンド(約7兆円)でシャイアーの全株式を取得すると提案し、シャイアーの取締役会は提案を自社の株主に推奨する方針を決めた。
○武田は4月25日、アイルランドの製薬大手シャイアーを買収する方向で最終調整に入った。
○武田は最終合意の期限を当初の英国時間25日午後5時(日本時間26日午前1時)から5月8日まで延長し、詰めの交渉を急ぐ。
○両社は期限までに資産査定や協議を進め、買収条件を固める意向だ。

○買収が実現すれば、日本企業による海外企業の買収としては、2016年にソフトバンクグループが約240億ポンド(3・7兆円)で買収した英半導体設計大手ARM(アーム)を超えて過去最大規模になる

○買収が実現すれば、武田は日本企業として初めて、世界の製薬企業の売上高トップ10に入る模様。

○1株あたりの買収価格は、49.01ポンド。
○直近の提案内容は、株式による支払いが27.26ポンド(56%)、現金21.75ポンド(44%)となる。

武田薬品の英製薬大手シャイアーの買収は、まだ暫定合意ですので資金調達に関しては不透明ですが、ポンド/円の買いが約3兆円出るのではないかといわれています。

3兆円という金額は巨大であり、その資金調達が為替マーケットに少なからずインパクトを与える可能性が高まっています。

ここで、先にポンド/円の買いが約3兆円出ると書きましたが、為替市場で取引されるのは、ポンドと円の取引を直接行うということはほとんどありません。(アメリカ・ドル以外の外国通貨と日本円との通貨ペアで為替取引をすることをクロス円取引といいます。)

実際に行われるのは、ドルをベースにして取引される形で、一旦通貨をドルに交換してから、お互いの通貨を交換するのです。

ポンド/円の場合は、 ドル/円の取引とポンド/ドルの取引を順次行うことによって、ポンド/円の取引を成立させるのです。

以上のような取引を行うことから、ドル/円の為替にも影響を与えるのです。

では、過去ソフトバンクが英ARM社を買収した、2016年6月~9月までの、ドル/円の動きはどうだったでしょうか。
下記の図は上記の期間における、ドル/円の状況です。
その時期と思われる期間を四角い枠で囲んであります。

これを見ると、2016年7月上旬から中旬にかけて6円から7円程度上昇した形跡と、8月から9月にかけて4円程度上昇した形跡がみてとれます。
専門家の話では、その時期7円程度動いたという事ですから前者がその時期かもしれません。

いずれにしても、今回、もし買収が実際に行われるとしたら、どの程度上昇するかの検証が可能と思います。

来月、連休明けからの武田とシャイアーの大型買収の報道、そして、英ポンド/円やドル/円の行方が注目されます。